Aloha! 治る力

治る力を生かした医療を求めてハワイに移住して来た医師のブログ

医療現場の「以心伝心」

 

5年生存率1%

まだ30代でステージ4のすい臓がん闘病中の患者さんが涙を流しながら「わたしはステージ4のすい臓がんは治らないんだっていう事はよく分かっているんだけど、とても辛いんだ」と言われました。そして彼女の腫瘍内科のカルテに「このケモセラピーは緩和的治療であり、緩和的治療しかオプションがない事を患者さんは理解している」っていう記述があった事を思い出しました。つまり「自分たちはちゃんと厳しい現実をカウンセリングしたのだとメディカルリーガルの側面を考慮している」ということです。

 

実際にAmerican Cancer Scority によると、ステージ4のすい臓がんの5年生存率は1%です。「変な希望を持たせてはいけない」という医療関係者としての責任からきっとそういった記述になったのだろうと思われますが、わたしはちょっとだけ違和感を感じました。正確には「このケモセラピーは緩和的治療であり、我々のクリニックでは今の所それ以上の治療法はできないという事を患者さんに説明し、理解していただいた」と記述すべきだと思ったわけです。

 

 

治療法が確立されてない疾患については、困難な闘病をされている患者さんに、現実にわかっている事をオープンにしながら、最新のデータをもとに、サバイブしようとしまいと残りの人生がハッピーであるようにサポートしていくのが私たちの医療のプロの役割だと思っています。この場合、「5年生存率1%」を「彼女は治らないし、きっと残りの闘病はとっても辛いものになりそうだ、気の毒だ」と思いながらカウンセリングするのと、「5年生存率1%に彼女が入りたがっているなら、分かっている事を全て総動員してそれに近づけるようにサポートしよう、そして残りの闘病も精神的や肉体的な苦痛が少なくなるようにサポートしよう」と思いながら接するのとでは、大きな違いがあると思うんです。

 

以心伝心の科学

私たちの心がけや思考は患者さんと同じ部屋にいて会話している時にものすっごく重みを持ったものだと思っています。そして私たちの気持ちは「以心伝心」で言葉にしてなくても伝わるものかもしれないと思っています。最近、わたしのお友達、のりちゃん先生が面白いブログをアップされていました。虫の知らせの不思議 - 小さなミラクル通信 というタイトルで、Morphogenic Resonance (形態形成の共鳴)について書かれています。Morphogenic Resonance (形態形成の共鳴)とはイギリスの生物学者ルパート・シェルドレイク先生の仮説で「虫の知らせ」や「以心伝心」のような現象は「形態形成の場」にアクセスしてResonance共鳴現象が起こる事で通じ合うのだというものです。彼の色々な実験の一つに、迷路を通るマウス達がお互いの物質的なコミュニケーションを絶った状態でも、次の世代になる程、早く迷路を通り抜けられるようになる実験があります。どうやって迷路を通るのかが受け継がれるのでしょうか? 彼の説明によると、形態形成の場にアクセスして通り方を受け継ぐのだそう。渡り鳥が行き先を知っているのもこの形態形成の場にアクセスしているからだというのが彼の説です。

 

テレパシーのメカニズムはわからないとしても、脳の機能を調べるfMRIでテレパシーのタスクが成功した時には右のparahippocampal gyrus (研究サブジェクトは右利き)っていう部分の脳が活性化されていたっていうニューロイメージングを使った研究も出てきているし、このような人間のNon Locality (ノンローカリティー=物質的な体ではない部分)の部分やバイオフィールドなどまだ今はよく解っていない部分も、「今のサイエンスモデルでは確実な説明はできないけど「何かある」」っていうところまでは色々な文献が出てきてます。

 

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わたしは、医療の面ではどうしてもゴールが「病気を治すこと」に一般的にはなっており「治療がない=Failure」と考えられてしまいがちで、そこから形成されている「形状場」は、もしかしたら患者さん達を苦しくさせてしまうのかもと思うようになりました。のりちゃん先生のブログを読みながら、こういう部分の医療もこれから発展して行って「ハッピーでピースフルな気持ちで天命を全うされるようにサポートする」医療として機能して行くと良いな〜と思っています。

 

不安と恐怖のない形態形成場

「以心伝心」のメカニズムが解明されるまでにはもっと時間がかかりそうです。それまでは私は医療関係者として、上の患者さんのような方に接する時には、自分がどのような「形態形成の場」に患者さんとともに参加しているのかっていうのもある程度意識してみると良いかもしれないと思うようになりました。5年生存率などのエビデンスやデータはありますが、人はみんないつかは旅立って行くし、「いつ、どうやって?」っていうのはわからないもので、その方の将来も本当は確実にはわからないものです。不安や恐怖心は免疫を下げてしまうし、たとえ厳しい現実についてのカウンセリングをするにしても、患者さんの毎日の暮らしからJoy, Happiness, Enjoyment がなくなってしまうようなやり方は避けるべきだと思います。「治るのがとっても稀な状態」でも「たとえ何があっても大丈夫」って思えるような形状場はきっとどこかにあるかもしれません。もしかしたらそれは集団意識で作り上げて行くものなのかもしれません。もしも本当にそのような場があるなら、そこにアクセスし、心が安心でピースフルな感じでいられるような「以心伝心」を診察の中でloving kindeness のハートの中に保ち続けられるようにしたいな〜と思っています。色々な宗教観や信仰では、たいていの場合あの世への旅立ちは決してこわいものではなく、心肺停止になった後生き返って来られた方々はものすごくピースフルな天国のようなところに行ってすっごく安心感があったというような証言がたくさんあります。実際にどうかは解っていないこのような事については医療関係者も、患者さん達もそれぞれが、自身の信仰にふさわしいバージョンで心が軽くなれるように信じていけば生きやすくなるかもしれないですね。

 

 

*時々ブログに出てくる患者さんのお話はプライバシー保護のため性別や年齢など少々変えています。

*イメージはグーグルイメージからお借りしています。

 

参考文献&サイト

http://www.sheldrake.org/research/morphic-resonance/introduction

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

Pancreatic cancer survival rates, by stage