Aloha! 治る力

治る力を生かした医療を求めてハワイに移住して来た医師のブログ

逆流性食道炎のセルフケア

明けましておめでとうございます! ブログを読んでくださりありがとうございます。今年もよろしくお願いします。皆様の幸せと健康をお祈りします。

 

年末年始は宴会などでちょっとこってりしたご馳走を食べたり、食べ過ぎたり、新年のお祝いのお酒やワインなどで、楽しいけれど体にとってはちょっとだけしんどい食生活になりがちです。特に、胸焼け、つっかえ感、など逆流性食道炎の症状がでて困っている患者さんたちをよく診る時期でもあります。

逆流性食道炎とは

逆流性食道炎は、食道に胃の中のものが逆流してしまうため、食道の粘膜が炎症を起こしてしまっている状態です。胃の粘膜は酸に強いけど、食道の粘膜は酸に弱いんです。健康な状態では食道括約筋が食道と胃の境目をキュッと締めてくれているので、胃の中のものは食道に行くことはできなくなっています。でも、食道括約筋を緩めてしまう食べ物や飲み物を摂取したり、食道粘膜の炎症などで食道粘膜が腫れてしまったりして食道と胃の境目の締まりが悪くなると胃の中のものが食道に逆流しやすくなってしまいます。

 

 

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現代医療では、そんな時に、胃酸を抑える薬を処方して治療します。ただこれは適切な治療期間を決めて摂取すべき薬です。なぜなら治療期間(大抵は2週間−8週間くらい)を超えてただ症状を抑えるために何ヶ月も何年も長期間胃酸を抑えてしまうと、胃腸のPHが変化して消化管の細菌のバランスにも影響するし、胃酸のおかげで働けるペプシンっていうタンパク質をアミノ酸に消化する酵素が働けなくなってしまうし、マグネシウムやビタミンB12の吸収が悪くなってしまいます。実際に長期間(何ヶ月も何年も)胃酸を抑えるプロトンポンプ阻害薬を使うことで、偽膜性大腸炎を起こす細菌の感染が起こったり、骨密度が低くなったり、ガストリンを分泌する腫瘍ができてしまったり、腎不全になったり、自己免疫疾患を起こす自己抗体ができてしまったり、など報告されています。食道があまりにも腫れてしまっていて重度の症状がある場合に腫れが引くまでの期間使用すべき薬です。ただ一度プロトンポンプ阻害薬を数週間使ってしまうと、薬をやめた途端、リバウンド症状でものすっごくひどい胸焼けが起こったりします。やめる時にコツがいるので必要だと判断した患者さんに投薬を開始する場合には、やめ時とやめ方も詳しくアドバイスするようにしています。逆流性食道炎の原因をまず断つには、逆流性食道炎を起こしてしまう食べ物、飲み物、薬、生活習慣をやめることです。逆流性食道炎と診断されて胃酸を抑えるお薬が出た時には、投薬治療と並行して生活の中でのセルフケアを開始すべき時でもあります。

 

逆流性食道炎の原因

  1. 食道括約筋を緩める食べ物や飲み物:アルコール、チョコレート、コーヒー、乳製品や牛乳、脂肪、オレンジなど柑橘系のフルーツやジュース、スパイシーな食べ物、お茶、トマトジュースやトマトソース、喫煙、ペパーミントやスペアミントなどが知られています。
  2. 逆流性食道炎をひどくする生活習慣:喫煙、肥満(特にお腹に圧力がかかりがちなぽっこりお腹)
  3. 逆流性食道炎を起こしてしまうリスクがある薬:抗コリン薬、ベータ作用薬、カルシウムチャンネル阻害薬、ニトロ、バイアグラ、アミノフィリンなど

食べ物飲み物についてはできるだけ忠実に避けるのがベストです。ゼロにできればそれがベスト!例えばチョコレートをちょっと食べるだけで食道括約筋は13時間くらい緩んだ状態になってしまうので、その間に寝っ転がったり、靴紐を結んだりすると胃の内容物は食道に流れてしまうから、ちょっとだけならいいだろうって思ってゆるーくやっても変化は望めませんね。真剣に治療を望まれる場合にはできるだけ忠実に守って2−3ヶ月くらいはその食べ方をメインテインするようにされると良いでしょう。この「逆流性食道炎を起こす食べ物を除外する食事療法」のことを英語で "GERD Elimination Diet' といいます。GERD はGastroesophageal reflux disease (食道へ逆する疾患)の略です。エリミネーションダイエット(Elimination Diet)っていう食事療法は、ほかにも偏頭痛などの場合に偏頭痛を起こす食べ物を除外する食べ方も Migraine headache elimination diet として処方したりします。統合医療で疾患や症状を起こす食べ物を断つことで原因を断つと言う意味で逆流性食道炎の患者さんには、この"GERD Elimination Diet'は逆流性食道炎の治療においては、医学のエビデンスSORT クライテリアのレベルBに相当する高いレベルでの有効性が認められているのでやってみる価値ありです!

 

禁煙や体重の最適化は時間がかかるので、じっくり取り組んで行かれるといいです。

逆流性食道炎が副作用としてある血圧の薬カルシウムチャンネル阻害薬を飲みながら、抗胃酸剤も飲まれている、なぜこの処方?っていうケース、結構診てきました。その処方をされた先生は、きっと副作用だっていう発想がなかったり、短時間診療で多くの疾患を持たれた患者さんを診察するため、色々な主訴を診断、治療して、時間がなくなってしまい血圧の薬と胃酸の薬はただ投薬を継続する処方になってしまったっていうような事情があるのかもしれないし、その患者さんが飲まれている薬の全てを把握しにくい臓器バラバラ診療の結果なのかもしれないと思っています。その場合には、かかりつけドクターにまず現在飲まれているお薬にのリストを持っていき相談されると良いと思います。逆流性食道炎を起こさないものに変更してもらわれると良いでしょう。

 

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(この画像はhttps://www.min-iren.gr.jp/?p=11960全日本民医連からお借りしました)

 

投薬治療ではない治療方法

その他にも投薬ではないレベルBのエビデンスがある治療法は

  1. 食事時間と離れた時間(3時間以上)で毎日30−60分の運動
  2. 植物繊維の摂取を1日30−40グラム
  3. 鍼灸治療
  4. 腹式呼吸
  5. ベッドの頭の部分を上げる(リクライニングできるベッドや枕を重ねたりする)

です。

その他大切なのは、炎症を起こす食べ物である砂糖、精製された小麦粉や白米などを減らす(できればほぼゼロにする)事です。「抗炎症ダイエット」です。

 

逆流性食道炎プロトンポンプ阻害薬を投薬された場合には、かかりつけ医と相談されて投薬期間とやめ時を決められると良いでしょう。そしてプロトンポンプ阻害薬をやめるとき、リバウンドでひどい胸焼けが起こることなどを理解して食事療法、その他、投薬以外のセルフケアを充実させつつ、サプリで効果があるとされているものを摂取してその間をしのぐ作戦を立てられると良いでしょう。そのやり方やサプリについてはいつかまた。

 

逆流性食道炎の病院での治療・自分のセルフケアをしている場合、他にも注意しておきたいことがあります。それは消化管以外にも、例えば歯ぎしりや睡眠にも逆流性食道炎は影響していることを知っておくっていうことです。歯ぎしりは食道の酸性度を計測してみたら胃酸が逆流して酸性になっている方々に歯ぎしりが多かったっていう研究結果もあり、これは食道の逆流で歯ぎしりをしてしまっているのか、そういう因果関係があるのかはまだわかっていませんが、とにかく関係はあるっていう事が分かっています。そして歯ぎしりがあると睡眠にも影響します。食事と睡眠は本当に大切は「薬」です。特に毎日の睡眠をちゃんととっていないと、自然に毎日摂っている大切な「自然のお薬」を摂取していない状態になり、全身の健康に影響します。そして、胃酸の逆流は喉まで起こってしまうと咳が出てしまうし、喘息とも関係していることが知られてます。ただ胸焼けだけを治療しているのではなく、全身の健康に影響するんだ!と思って現代主流な臓器バラバラ医療ではあまり重要視されていない臓器システムのつながりを意識して、できる範囲で、自分でできるセルフケアー実行してみられると良いと思います。このブログは患者さんを治療をするものではありませんので、個人的な質問などはかかりつけのドクターに相談してくださいね。

 

参考文献&サイト:

画像はグーグルイメージからお借りしています

1. (得)けんこう教室/逆流性食道炎/生活習慣の改善をこころがけて – 全日本民医連

2. Lazarus B et a; (2016) 'Proton Pump inhibitor use and the risk of chronic kdiney disease' JAMA Intern Med, 2016 Feb;176(2):238-46 doi: 10.1001/jamaiternmed.2015.7193

 3.

4.

5. 


6.Eduardo Chueca et.al (2012), 'Role of gastrin-peptides in Barrett's and colorectal carcinogenesis' World J Gastroentrol 2010 Dec 7; 18(45): 6560–6570. Published online 2012 Dec 7. doi:  10.3748/wjg.v18.i45.6560

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3516208/

 

7.http://projects.hsl.wisc.edu/SERVICE/modules/18/M18_CT_Gastroesophageal_Reflux_Disease.pdf