クッキングオイルについて知っておきたい事
アロハ! 昨日アメリカの医師のための鍼灸のコースの最初の試験を無事に終えて今日は久しぶりにリラックス!ブログをアップします。
お友達からクッキングオイルについて質問されました。ひとくくりにこのオイルは良い悪いと無責任に答えてしまうと誤解を招いてしまうので「クッキングオイルについて知っておきたい事」を簡単にまとめます。
クッキングオイルは加工食品
結論から言うと、全てのオイルは「精製された加工品」の部類に入り、「カロリーの割に繊維、ビタミンの割合が低い食品なので、ほんの少しだけ摂取する方が良い」食品です。必須脂肪酸の摂取には、もっとふさわしいwhole foodがある事も踏まえて大きな目で、クッキングオイルの食べ物全体の中の一部としての位置付けをちゃんとつけていかれると良いでしょう。
さて、クッキングオイルとしてオイルを購入する場合に、何を考えてどう選ぶと良いのでしょう?
クッキングオイルを購入する場合のポイント
クッキングオイルを購入する場合、大切な2つのポイントがあります。それは
1 オイルを購入する=「少量を調理で使用する」という目的で買うのが健康にとってはベストだということを理解すること。「オイルを飲んだり」するとカロリー大量摂取してしまう割に摂取目的の栄養の割合は少ないのでオススメしません。そして少量のオイルでソテーするよりも、ウォーターソテーなど水でソテーするような調理法、蒸す、茹でる、無水鍋などオイルがなくても美味しくできる方法をたくさん取り入れてくださいね!
2 オイルの酸化しやすさについて理解し、お店で手にとってラベルや製造年月日を見ながら、どのオイルが最も酸化していないかを見抜き、購入後の保存、調理についても酸化をできるだけ防ぐ方法を取り入れる
ことです。
それについて役に立つ知識を簡単にまとめます。ここでは大雑把なお役立ち情報として「緻密に理解」よりも「大きく理解」を目的でまとめますので、大体のことを理解するための情報として理解してください。
オイルの酸化しやすさを見抜く
「オイルの酸化しやすさ」に関わる知っておくべきポイントは3つです。
1 栄養面(色々なオイルに入っている脂肪酸の種類と酸化しやすさを理解する。また抗酸化物質となるビタミンや繊維、などがどれだけ入っているのかも理解する)
2 どの程度酸化が進んでいるのか、つまり製造してからどう保存されており、どのくらい日にちが経っているのか(お店で、そして自宅で)。オイルは全て「オイルを製造した時」から酸化は始まります。製造年月日が最近であるほど酸化は進んでいないという事です。でもそれって何ヶ月くらいのレベルで酸化が進んでいくの?その辺りの理解もちゃんとしておきましょうね。
3 使い方(オイルの使用量、オイルの使用温度、使用時の室内換気、クッキングオイルの使用時間などなど)でオイルを熱したときに蒸発したオイルへの被曝の程度が決まります。
まず、1の栄養価から説明していきましょう!
オイルの成分である脂肪酸についてまず、ざっくりと説明しましょう。脂肪酸は炭素と水素からできています。その炭素と炭素の間の結合が一本の手でつながっているものを飽和脂肪酸、二本の手でつながっている二重結合のものを不飽和脂肪酸と言います。二重結合がいくつあるかで不飽和脂肪酸はさらに一価(または単価)脂肪酸と多価脂肪酸とに分けられます。同じ炭素数の脂肪酸を比較した場合、二重結合の数が多くなるほど融点が低くなります。
一般に、脂肪酸は炭素の数が多くなるほど融点(固体から液体に変化する温度)が高くなります。つまり「二重結合が少なく、炭素数が多い脂肪酸は酸化しにくい」と大雑把に言えます。
炭素数2-4個のものを短鎖脂肪酸(低級脂肪酸)、5-12個のものを中鎖脂肪酸、12個以上のものを長鎖脂肪酸(高級脂肪酸)と呼びます。
オイルの脂肪酸比較表で見てみるとこんな感じになっています。
農林水産省の脂肪酸について説明されているページにある表(リンク先)で大雑把に理解できます。
またこの表のようにオイル別にまとめられたものもあります。ただこれには炭素数が書かれていないので、もう一つ下の表と上の表を組み合わせて理解していくと良いでしょう。
またはオイル別にこのように表になっているのもわかりやすそうです。炭素数が18の脂肪酸であるオレイン酸(二重結合一つ)リノール酸(二つ)アルファリノレン酸(3つ)の比較表もあります。
これらの表から、植物性のオイルで加熱しても良さそうなものは飽和脂肪酸が多いココナッツオイル、炭素数が多い不飽和脂肪酸で二重結合が一つしかないオレイン酸を多めに含むオリーブオイル、キャノーラオイル、米ぬかオイルなどが候補に上がりますね。オリーブオイルについてはフィルターする過程で酸化に対する安定性が減ってしまうという研究結果(参考文献5番目)が出ているのでエキストラバージンのものが良いかと思われます。
2 では次にどの程度酸化が進んでいるのか
これについての研究文献があります(参考文献3つ目)、この研究では、クッキングオイルの賞味期間(会社が賞味期限として製品に記入しているもの)と実際に酸化が起こった期間を調べたものです。調べられたオイルはアーモンドオイル、アボカドオイル、ヘーゼルナッツオイル、マカダミアナッツオイル、スレープシードオイル、米ぬかオイル、ごま油、ウォールナッツオイルで、オリーブオイルやココナッツオイルは含まれてませんでした。
アーモンドオイルは製造から14ヶ月が賞味期間としてこの研究に使用された商品には記載されていますが、実際は3ヶ月経った地点で酸化がかなり進んでいたそうです。アボカドオイルも13ヶ月が賞味期間と記されていても実際は7ヶ月、米ぬか油は賞味期間7ヶ月で実際は6ヶ月半(実際に近い値が記されている)などがこの研究の主な結果です。この研究で調べられたオイルの中では、マカダミアナッツオイルが軍を抜いていました。賞味期間の表示は5ヶ月なのに実際は15ヶ月半くらいで酸化が進んでいたのだそうです。
実際にオリープオイルやキャノーラオイルを調べた結果がなくても、米ぬか油よりもちょっとオレイン酸が多いっていうところが上の表からわかるので、米ぬか油の6ヶ月半よりもちょっと長いくらい(7ヶ月、8ヶ月くらい)かな〜と予測できますね。
オリーブオイルやキャノーラオイルをもしも使用されるのでしたら、製造年月日から7ヶ月以内が賞味期限と考えられると良いでしょう。そしてこの賞味期限は20度で保存したことを前提としています。つまり室温よりも低い温度で保存された時のデータなので、冷蔵庫で保存しましょう!
3 オイルの使い方
これについては、注意して考える必要があります。まず油で揚げるーこれは控えるべきです。中国で注目、研究されているのが、喫煙していないのに肺がんにかかってしまった女性たちのケースはもしかしたら、COF (Cooking Oil Fume)と関係があるのではないかということです。実際に長時間中華鍋でオイルを使って調理しているような環境の女性の非喫煙者の肺がんのケースが報告されていることからこのように注目されています。このCOF (Cooking Oil Fume)は、油が加熱されて蒸気になったものです。ファーストフード屋さんでポテトフライをたくさん揚げているエリアで「油の蒸気」を感じたことはありませんか?それです。COF (Cooking Oil Fume)はpolycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs)の一つで、発がん性がある物質なんです。
実際にクッキングオイルで調理をする場合には、揚げ物はやめて、ソテーするにしても高温ではなく、低温で短時間、そしてちょっとお水を入れたりして蒸し焼きにしたり、水分がある状態で調理すると良いでしょう。そして換気はとっても大切です!!
私は家で調理する時にできるだけウォーターソテーするように心がけています。それでもちょっと油が欲しい時にはココナッツオイルを少量使っています。以前オリーブオイルも試しましたが、調理する時に、室内にオイルの蒸気の匂いが充満してこれはマズイと思い、それ以来使っていません。色々なリソースではオイルの蒸発点の温度はココナッツオイルの方がオリーブオイルよりも低い温度で報告されているので意外だな〜と思いましたが、現実にココナッツオイルを同じ強さの熱で熱してもオリーブオイルの時のような「蒸発油」のあの独特の匂いがお部屋にこもるような事はありませんでした。食事については、保存期間が適切などうか、腐ってないかなど、自分の五感と常識で自己判断する感覚はとっても大切なものだと思います。なので、私はそれ以来オリーブオイルを加熱には使っていません。キャノーラオイルっていう手もあるかもしれませんが、私は家では油調理はあまりしないし、ハワイのコンドーのキッチンはとっても狭いのでわざわざオイルをいくつも買って保存したり試したりはしていません。
キャノーラオイルについてはもしも使いたいなら遺伝子組換えでないものが良いと思っています。アボカドオイルもオレイン酸が多めに入っているので調理には使えそうですが、私は試したことはないし、わざわざ買って試そうとは思いません。アボカドを買って食べる方が繊維もカリウムや他の栄養素もアボカドオイルとして精製されたものよりも摂取しやすいので、その方が安上がりだからです。アボカドオイルは上の研究によると酸化による賞味期限は7ヶ月になっていました。
クッキングオイル選び方まとめ
以上、色々書いてしまいましたが、クッキングオイルの選び方について知っておくべきことをまとめると、
1 ココナッツオイル、マカダミアナッツオイル、オリーブオイルやキャノーラオイル、アボカドオイル、米ぬかオイルなどが調理オイルの候補
2 製造年月日が明記してあるもので最も新しいものを選び、冷蔵庫に保存する
3 オイル調理よりも蒸す、ウォーターソテー、無水鍋などでの調理を主にして、頻繁にオイルで調理しないこと、そしてもしもオイルでクッキングするなら少量のみ短時間使用して途中で水分を追加して蒸し焼きにする。(油で揚げるのはハイリスクです)
4 換気は十分にし、もしも調理中に蒸発した油が臭ったらその調理法での料理は繰り返さない方が良いので、火を弱める、オイルを変える、など改善点をちゃんと理解する
5 製造日時から6ヶ月経ったらオリーブオイルやキャノーラオイル、アボカドオイル、米ぬかオイルは賞味期限切れなので処分する。(なのであんまり大きなものは買わないのがベスト)買う時には生産日からなら6ヶ月で使いきれる小さいものでオーケー。ココナッツオイルの酸化の期限はまだ文献を見つけていないのでなんとも言えませんが飽和脂肪酸の摂取は血管病変につながるので、大きなものをお得だと思って買ってしまうと、大量に摂取すべきでないものを長期間保存することになってしまいます。
っていう事です。
最後に、必須脂肪酸を効果的に摂取するために精製されたオイルを使うよりはwhole foodの方がベストっていうことはちょっと上で触れましたが例外もあります。水質汚染が進んでしまう前は魚でオメガ3の不飽和脂肪酸であるEPA, DHAを摂取することができましたが、今では健康に効果がある容量を魚から摂取すると体に有害なレベルのMethyl Mercury, PCBsなどの汚染物質も一緒に摂取してしまうので、サプリで摂取せざるを得ないような状況になっています。オメガ3のサプリについてはいつかまたまとめようと思います。
イメージはグーグルイメージからお借りしています。
参考文献、サイト