Aloha! 治る力

治る力を生かした医療を求めてハワイに移住して来た医師のブログ

アメリカの統合医療の背景

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現代医療の発達により、急性感染症、緊急手術を要するような病気の治療がスムーズにできるようになりました。よりハイテックな治療法、より侵襲が少ない手術のやり方もどんどん開発されています。それはとっても素晴らしい事!

それと並行して、新しい医療の分野も注目されるようになりました。今ある臓器別、疾患にフォーカスを当てた治療法では治りにくい慢性病が沢山あり、そういった慢性の病気をリバースしたり、診断がつく前の未病の段階で治したり、「最適な健康=Optimal Health」を実現するための医療が必要だと感じている医療の専門家達が増えてきました。

そんな医療の専門家たちが集まり立ち上げられたのがABIHM ( American Board of Integrative Holistic Medicine)(アメリカの統合医療のボードの原型)です。最近、このボードから、 ABPS (American Board of Physician Specialties) というアメリカの医療専門の科を認定する機関から正式に認定されたAboIM (American Board of Integrative Medicine) という新しい認定資格ができてきて、さらに、ドクターだけでなくナース、カイロプラクターなどの幅広い医療の専門家すべて同時に参加できるAIHM (Academy of Integrative Health and Medicine)という組織ができました。そう!アメリカで今、統合医療は大きな時代の流れになっていてとっても注目されている分野なんです!医療は社会のニーズに合わせてどんどん進化して行っていて、そして医療の専門家も通常の現代医療をこれまで中心にやってきたけど、統合医療も並行して勉強できるように、オンラインで勉強できる講座や学会も充実して来ています。何も統合医療だけやろうっていう医療専門家だけ統合医療ができるのではなく、ちょっとずつ勉強しながら現代医療をやっている普段の診療に取り入れたり出来る気軽に参加できる分野なんです! 

 

統合医療では、マインド、バディー、スピリットの3つの部分すべてにおいて患者さんをサポート&ケアーします。そのためには患者さんの仕事や家庭環境、社会も視点に入れます。これを「Wholesome Care= 全人的医療」と言います。患者さんと良好な信頼関係を築いて、パートナーシップを築きながら個人個人にあった治療のプランを立てていきます。このプロセスは現代医療でもサポートされていますが、時間その他のリソースの問題があり、実現が困難な場合もあります。統合医療ではこれがまずマスト!になっており、そうできるためのリソースをまず充実させ、患者さん一人当たりの診察時間が長めにとられています。そして何ページにもおよぶ、患者さんのこれまでの歴史を詳しく把握するために診察前に患者さんに記入していただくフォームを導入しているクリニックが沢山あります。


" All people have innate powers of healing in their bodies, minds, and spirits. Integrative holistic health care practitioners's goal is to bring out these powers to affect the healing process" 「すべての人々には身体、精神、スピリットに癒しの力が宿っている。統合医療のプラクティショナーのゴールは、その力を引き出し、治癒のプロセスを助けること」とボード試験の勉強の時に学びました。本当にその通りだと信じています。

普段の診療の中で、たとえば耐糖能異常(糖尿の前段階)があり、糖尿病になってしまわないようにシュガーが多い甘いものを減らしてくださいと生活習慣指導をされた患者さんが「がん、肥満、糖尿などが怖いから本当は食べたいけど我慢する!」っていう心でそれをやるのと、「自分に最高のものをあげたいし、長く健康でいて家族との時間を楽しみたい。糖尿になって薬を飲む必要がないようい今生活を変えよう!」っていう心でやるのとでは大きな違いがあります。「我慢している」状態では大好きなものをギブアップしているっていうストレス自覚がつきまとってしまうため、マインド、バディー、スピリットすべてにかかる負荷の総合点では、そのストレスからくるダメージが追加されてしまいます。「がまん」の心から「最高のもの」への心のあり方をシフトするお手伝いも観点に入れながら、患者さんの全体、スケジュール、仕事、家庭環境、住んでいるエリアなどにも目を向けると、忙しいので便利な食生活で加工食品に頼ってしまうような背景も見えてきます。「どうやったら実現しやすくなるか」を患者さんと共に考えて工夫していくと、社会全体がヘルシーな生活を実現しやすくするためには? 環境にやさしい医療とは? などなど医療全体や社会全体についても色々と私自身が考え、気づかされる事が多くあり、そんなプロセスをたどる事で私自身が医師として人間として成長させてもらえているっていう事を実感します。私たちが仕事として関わっている医療を通じて経験するすべての事が学ぶ機会であり成長に繋がっているんだと最近気づき始めました。「ラブ&愛する者とのつながり」が一番の癒しである事を信じ、自分が持てる最大の思いやりを持って患者さんに接する事で自分自身の心が安らぎ、忙しくて残業していてもストレス自覚が少なくなり、人生も豊かになっていっているようにも思えてきています。そう、統合医療はきっと医療を提供する側にも大切なものを与えてくれる医療のあり方なのかもって思っています。