Aloha! 治る力

治る力を生かした医療を求めてハワイに移住して来た医師のブログ

環境を整えて健康に(腸内環境のEco システム編)

最適な健康:Eco -System

最適な健康ってどうやってどうやって実現するの?

これが私が医師として最も興味とパッションを持って取り組んでいる事です。それはとってもシンプル。治る力を発揮できるように「環境を整える」事です。今日はその中でも最も私たちに近い環境である腸内の環境についてお話ししましょう!

私たちの体はドーナッツのようになってます。つまり、お口から肛門までの空洞がドーナッツの穴にあたり、細胞がある部分や臓器の部分がドーナッツの身の部分です。そんな私達の「最も近い環境」がお口から肛門までの消化管の中です。最近、腸内細菌と人間との密接な関係について色々と注目されていますが、腸内細菌が喜ぶような餌(プレバイオティックな繊維)を食べると、それを細菌くん達が食べて発酵してくれて、短鎖脂肪酸を分泌してくれ、それが生体機能を助けてくれる事がわかっています。

 私たち人間は腸内細菌と持ちつ持たれつ共存しているEcoシステムなんです。そして驚くべき事に人間の細胞全体の数の100倍も細菌の遺伝子が身体にあるっていう事から言えば、私たちは細胞よりもむしろ細菌の集合体なんです。しかも、善玉菌には、抗肥満作用(ダイエットの味方です!)、抗がん作用、抗炎症作用、免疫を整える機能、胃腸のバリア機能、脳などの神経系を整える作用など色々報告されて来ていて、最近は自閉症潰瘍性大腸炎の治療ターゲットとして、消化管の細菌が注目され研究されてきています。私のクリニックにも現代一般的に普通だとされている食生活(動物性、加工食品、精製された穀類や糖類が多く摂取される生活)により"Diet-induced dysbiosis"(食生活により引き起こされる腸内細菌のアンバランス)が起こった状態になっておられる方が多くおられます。それは慢性疾患が起こる身体の環境因子の一つでもあります。私は普段の診療でこの消化管の細菌バランスを最適化することも治療ターゲットとして活用しています。

 

腸内細菌を最適化するコツ!

では、どうやって腸内細菌を最適化すれば良いのでしょう! 腸内には病原菌も、健康を守ってくれる善玉菌も住んでいますが、その全体を健康な良いバランスに保つ秘訣は食事にあります。

1)レジスタントスターチ(消化されない繊維=難消化性糖類、ごぼう、さつまいも、玉ねぎ、アーチチョーク、豆類の皮の部分など)を摂取し、細菌くん達に餌をあげる。

2)ベーガン(菜食)な食事がベストな腸内細菌バランスを作り出す。

3)プロバイオティックのサプリは抗生剤使用中、使用後、または腸内細菌バランスが悪い時に体内に取り入れる目的で摂取する事は意味があるけど、そもそも彼らはハワイの経済に例えると、「旅行でハワイに来て経済に影響を与えるけど、去っていってしまう旅人」のようなものなんです。あくまで食事が、そのサプリで取り入れた菌が定住して発酵して機能していくのかの決め手になります。旅行でハワイにきて、あまりにも食事が美味しくって快適だったので定住してしまうようになるといいんです。そしてサプる場合には"Arrive Alive"(腸内に生きて届く)サプリ方をしないと効きません。(これについてはいつかまた書きます)

4)動物性の食品は食べると便の胆汁酸が増える事が知られており、そうなると、胆汁酸に強い細菌が優位になり、植物性の繊維を食べる菌が減ります。これは食べた24時間以内に起こる変化として知られてます。胆汁酸は活性酸素の発生を介して遺伝子に損傷を起こす事が知られています。動物性食品は極力減らす事が大切です。ベーガンやベジタリアンの腸内細菌がとってもハッピーっていう事が最近色々な研究でサポートされて来ています。

5)精製された糖質(砂糖、精製された小麦粉)は善玉菌を減らし、悪玉菌を増やしてしまうので、ほぼゼロにするのがゴールです。そして農薬、加工食品に入っている添加物などのケミカルも極力減らすようします。

6)お産は経膣分娩、授乳は母乳が理想的です。疾患や身体的な理由で医療的にこれができない場合もあります。その場合にはどうすれば良いのでしょう? 下の参考文献にあげた研究では75人の赤ちゃんをランダムに二つのグループに振り分けて生後6ヶ月までプロバイオティックと偽薬を投与して13歳までフォローしてみたら偽薬グループは17%に自閉症や多動注意力欠如の診断が見られたけど、プロバイオティックのグループはなんとゼロだった!!!というものです。今後もっと本格的に研究されて安全に赤ちゃんがプロバイオティックをどの程度の用量を摂取すると良いのかなどのガイドラインができていくと良いなと思っています。

7)毎日の継続が大切。旅行や来客などで食事が普段と変わってもまた元に戻すことが大切です。

 

色々書きましたが、シンプルに言えば昔ながらの菜食(野菜や果物、根菜類、豆類中心の繊維が多い食事)をすればベストっていう事なんです。そう、昔の日本の食事です。ベーガンでも砂糖や精製された小麦粉でできたベーガンジャンクフード(クラッカーやベーグル、マフィン、ケーキなど)を食べていると効きません。自然な菜食は栄養密度が高く、美味しくって身体を中から綺麗でハッピーにしてくれます。

また、そういう食事をするっていう事は環境に優しい産業をサポートする事にもなり、私たちが住んでいる環境にも優しい消費活動に繋がります。私たちの健康は医療も含めて環境に優しい事を実践していけば大きなエコシステムとして素敵に機能していくんだと信じて、私も「環境を整えて治る力を整える医療」を目指して毎日創意工夫&勉強しています。

私の受け持ちの患者さんたちの多くは、お肉や甘いデザート、コーヒーのお砂糖とミルクを諦めるまで色々と葛藤されていますが、一大決心してやってみると「初めて毎日のお通じが快適で規則的になった」「試しにバーガーを食べたら半分も食べられなかったし、お通じが止まってしまった」と興奮してお話ししてくださる方々が多いです。これは決して特別な事ではなく、ちゃんと文献で報告されている事なので当たり前なのですが、彼らが一大決心して、ピッツァやアイスクリーム大好きな子供さん達に抵抗されながらも実際に献立を立てて改善していく様子は本当にアメージング!!私はそんな患者さんたちのコーチ&チアリーダーであり、"Loving Kindness"を持ってサポートし続けていきたいです。腸内細菌には抗肥満作用があるものもあるので、「これまでカロリーカウントでダイエットしてもダメだったけどすごい速さでお腹周りの脂肪もスッキリして二週間の出張から帰ってきた夫にも驚かれた」などなど、実践してみると早く効果が出るので、患者さん達のモチベーションもすぐにアップされてくるのもとっても良いことです。

ハッピーな気持ちで無理せずに

私たちの身体がどのような食事にどう反応、機能していくのかっていう事は"Given deal"(そのように与えられているもの、そうできているもの)なので、「なぜ大好きなケーキやステーキを食べても大丈夫な身体に生まれなかったんだろう」などと嘆いていても、何も変わりません。ただ、それぞれ自分にあったやり方とペースでできる範囲で徐々に変えていかれると良いんだと思います。そしてイヤイヤながら「犠牲を払って我慢している」っていう気持ちで取り組んでも、そういったストレスを感じるような気持ちが追加されてしまうので「食事は改善されてもストレスが増えてしまっている」状態になり、総合的にはトキシックな食べ物が減ってもトキシックな感情が追加された状態になるのでトータルなトキシン量は減りません。または「本当に?」と疑いながらやっても「ノーシボ効果=プラセボの反対」が起こるので30パーセントくらい効果が減ります。なので自分で決めてできる範囲で、ハッピーな気持ちで健康な腸内細菌への道のりを歩んでいかれるのがベストだと思っています。

 

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参考文献:
Kirsty Brown et al (2012) "Diet-Induced Dysbiosis of the Integrtinal Microbiota and the effects on immunity and disease"; Nutrients. 2012 Aug; 4(8): 1095–1119. 
Published online 2012 Aug 21.  doi:  10.3390/nu4081095
 
Marian Glick-Bauer et al (2014) " The Health advantage of a vegan diet:exploring the gut microbiota connection";Nutrients. 2014 Nov; 6(11): 4822–4838. 
Published online 2014 Oct 31. doi:  10.3390/nu6114822
  
Partty A et al. "A possible link between early probiotic intervention and the risk of neuropsychiatric disorders later in childhood " A randomized trial'. Pediatr Res. 2015 Jun;77(6):823-8. doi: 10.1038/pr.2015.51. Epub 2015 Mar 11.

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